キミの空になりたい
「藤波さん。マウンドからバッターボックスまで、どのくらいあるか知ってる?」
不意に聞いて来た涌井君。
「んー、10メートルくらい?」
「正解は、18.44メートル」
「じゅ、じゅうはち……?!」
そ、そんなにあったんだ……?
涌井君は土をならしながら、バックネットの方を見つめた。
「でも、藤波さん。やっぱり運動部だっただけあって、あそこまで届くのすごいな」
「……そ、そうかな?」
エヘヘと笑いながら私は少し下がった。
涌井君はここに投球練習に来たのだから、邪魔をしてはいけない。
「もう使わないの?」
「あ、うん。どうぞどうぞ使って」
私が下がったのを見て、涌井君が聞いて来た。
慌ててゆずると、彼はそのままバックネットに向かってボールを投げた。