キミの空になりたい
ボンッという音が鳴って、ボールが跳ね返ってくる。
もちろん、本気で投げたわけじゃないのに、この威力。
「す、すごい……」
思わず率直な感想が出てしまう。
この前、試合を見に行ったけれど、あの時はフェンス越しだったし、距離もあった。
こんな間近で見られるなんて……。
上原君とキャッチボールしていた時とはまた違うし。
「……」
ボールを拾い上げた涌井君がこちらを向く。
黙ったまま私を見つめる。
「……あ、ごめんね。私、邪魔だよね」
「いや、そういう事じゃなくて、暑いから日陰のベンチにいたほうがいいんじゃない?もう、日は暮れかけてるけど、西日キツいし」
涌井君は屋根付きベンチを指さして言った。