キミの空になりたい


「……けど、やっぱり手が震えた。オレは大丈夫って自己暗示かけてもな……」



そう言って、涌井君は自分の手のひらを見つめた。


やっぱり、まだ緊張で震えるんだ……。


そんなの当たり前だよ。


負けたら終わりなんだもん。


緊張しないほうがどうかしているよ。



「手のひらに人っていう文字書いて飲み込むと緊張しないとかウソだよねー。私やったけどガチガチだったし」


「……いつの時代の話だよ?ってか、実際にやる人いるんだ?」


「仕方ないじゃん。できるものは全部やったほうがいいかなって思ったんだもん」



涌井君に笑われて、恥ずかしくなったけど、ちょっとだけ嬉しかったり。


だって、こんな風に言葉を交わせるって思っていなかったから。


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