キミの空になりたい
「いやいや、大輔の声にオレがビビったから。あの時はマジで怖かった」
「アハハハ」
「それ以来、合宿中に怖い話はしてない」
野球部にそんなエピソードがあったとは……。
おかしくて、まだ笑いが止まらない。
毎日こうして、ベンチに座って話をしているのに、一つだけ気がかりな事があった。
一度もここで綾美ちゃんの姿を見ていない事だ。
金子君がここに涌井君が出没する事を知っていたくらいだから、てっきり綾美ちゃんも知っていると思っていた。
だから、こんな風に話していたら、いつか綾美ちゃんの姿を見ることになるんじゃないかって、緊張していたんだ。