キミの空になりたい
ああ、またズルい言い方しちゃったなって思う。
涌井君と毎日、バカ話で盛り上がったけれど、恋愛話を出す事はなかった。
触れられたくなかったのかもしれない。
実際、目の前の涌井君の表情は、すこしこわばっている。
「……大輔に聞いた?」
「ち、違うよ。私、上原君とそんな話をするような仲じゃないもん」
「……まあいいけど、過去の事だし」
ため息をついた後、涌井君はボールを軽く真上に放り投げた。
……過去の事……?
ウソつき。
それはまだ、現在進行形でしょう……?
「西口は知らないよ。あいつとは小学校が違ったから、家も反対方向。この公園の存在自体、知らないんじゃね?」
「そ、そうなんだ……」
それじゃ、綾美ちゃんはここで涌井君が毎日、投げている事を全く知らなかったんだ……。