キミの空になりたい
4番打者は涌井君。
涌井君はショートゴロに倒れ、3アウトチェンジとなった。
だけど、先制点が入った事で、四葉台の応援席の雰囲気はいいものとなっている。
点は入れてもらったものの、まだ1点。
マウンドにあがった涌井君は、袖口で汗をぬぐう。
深呼吸をして、一度だけ空を見上げた。
「涌井君ー!リラックスー!」
頑張ろうとしているのに、『頑張って』なんて言えない。
私はメガホンを使って、思わず叫んでしまった。
相手の応援で私の声は届かなかったかもしれない。
現に、今の私の声が聞こえたのは、涼子ちゃんとか、玲奈ちゃんとか。
私の近くにいる人のみだったし……。