キミの空になりたい
ラスト1ほど、緊張するものはない。
私だって、何度も同じような経験をしてきた。
あと1ポイントで勝利……っていうところでどうしても力が入ってしまうんだ。
涌井君は私みたいに、単純じゃないよね……?
今は本当にそう思い込んでいたい。
「フォアボール!」
願いむなしく、3人目のバッターは打ち取る事ができず、ランナーを出してしまった。
アウトあとひとつ……。
この重圧が、涌井君にのしかかっているんだろうか?
3塁を守っている五十嵐君が、涌井君に合図を送る。
その合図にうなずく涌井君。
「力むな……って言ってたね」
大声援の中、五十嵐君の声は、涼子ちゃんにも聞こえていたようだった。