キミの空になりたい


「あ、また落ちてる……」



何でちゃんと拾って持って帰らないかな……。


今度はベンチの下に転がっていた。


ボールを拾い上げると、この前のよりフニャフニャしていてやわらかい。


子どもが使っていたボールなのかな?



「……これは投げないと!」



ボールがあるって事は、投げろって言う前振りでしょ?


さっきまで涌井君の投球フォームを目に焼き付けて来たんだし、今度こそしっかり投げてみせる!


私は土の色が変わっているところに立つと、大きく振りかぶった。


よし、イメージ通り!



「……っ」



力いっぱい腕を振り下ろしたら、ボールはバックネットの金網部分にガシャンと当たった。


真っ直ぐ飛ばないで、斜め上の方に飛んで行ってしまったらしい。

< 260 / 341 >

この作品をシェア

pagetop