キミの空になりたい
「あ、また落ちてる……」
何でちゃんと拾って持って帰らないかな……。
今度はベンチの下に転がっていた。
ボールを拾い上げると、この前のよりフニャフニャしていてやわらかい。
子どもが使っていたボールなのかな?
「……これは投げないと!」
ボールがあるって事は、投げろって言う前振りでしょ?
さっきまで涌井君の投球フォームを目に焼き付けて来たんだし、今度こそしっかり投げてみせる!
私は土の色が変わっているところに立つと、大きく振りかぶった。
よし、イメージ通り!
「……っ」
力いっぱい腕を振り下ろしたら、ボールはバックネットの金網部分にガシャンと当たった。
真っ直ぐ飛ばないで、斜め上の方に飛んで行ってしまったらしい。