キミの空になりたい


柔らかいボールは、ストンと地面に落ちた。


はねもせず、その場で止まる。



「……」



それを見たら、なぜか急に涙が浮かんできた。


涌井君は毎日ここで頑張って来た……。


今日だって、9回2アウトまで完璧だったのに。


フォアボールと、あのたった1球で、勝負は決まってしまった。



「……っ」



その場にうずくまって、涙を流す。


泣いちゃダメ……私なんかより、涌井君の方がずっとずっと、悔しくて泣きたいはずなのに……っ!



「……太陽が真上のこの時間に、そんなとこにいたら、熱中症になるよ」



……え?


ガバッと顔を上げると、制服でエナメルバックを持った涌井君が目の前にいた。


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