キミの空になりたい
困ったように涌井君を見上げると、彼は苦笑しながらうなずいた。
そもそも、涌井君と2人きりにさせたって、何も進歩しないのはくるみだってわかっているのに。
「……くるみとよくここで、千羽鶴折ってたんだよ」
視聴覚室はエアコンが効いていて、涼しかった。
誰かが使った形跡もないのに、何でつけっぱなしなのかわからないけど。
「野球部の?」
「うん、そう。あれから2ヶ月くらいしかたってないんだね。何か遠い昔に思える」
私は真ん中の席に座った。
窓側は日が当たっていて暑いし。
その隣に、涌井君が座る。
「……甲子園の道は険しかったな。全国制覇したピッチャーすげーよ」
ポツリと言った涌井君。