キミの空になりたい
今日はボールが転がっていないから投げられない。
「金子と話すのは疲れる。あいつのテンションは何であんなに続くんだ?」
「中学の時からそうだったの?」
「そうそう。家帰ってもあんな感じじゃ家族が悲惨だよなー」
あきれたように言って、涌井君は屋根の陰から空を見上げた。
少しずつオレンジ色に染まっていく青い空。
「……ねえ、翔平」
「……ん?」
名前で呼ぶと、彼は優しいまなざしで私を見てくれる。
「好きになってくれて、ありがとう……」
「……オレは汐音の気持ちに応えるのが遅くなったのに、好きでいてくれてありがとうな……」
手を重ね、顔の距離が縮まる。
そっと目を閉じると、優しく唇が重なるのがわかった。
どこまでも続く空のように、私の想いもずっとずっと続くよ。
キミが見つめてくれる限り……
~END~