キミの空になりたい
「ねぇ、汐音。汐音は好きな人いないの?」
「えっ?」
急にそんな事を聞かれて、トクンと小さく心臓が反応した。
好きな人……って言われて、一番最初に私の頭の中に浮かんだのは、涌井君だった。
浮かんだけれど、まだ好きな人って確定したわけではない。
だって、教室では見た事のない一面をたまたま見ただけだもん。
誰だって、そういう一面を見たら、気になっちゃうものでしょ?
それに私、涌井君の事をあまりよく知らないし。
話した事なんてないから、彼がどんな性格で、どんな趣味なのかすら全くわからない。
……って、何で私、自分に言い訳しているんだろう?