キミの空になりたい
ドキッ……。
涌井君と目があって、私の心臓が跳ね上がる。
目があっただけなのに。
「藤波さん、どうかした?そんなに俺らのキャッチボールが珍しかったとか?」
「や、違うよ。普段、見ない光景だから、つい見入っちゃって……」
上原君に聞かれて、私は正直に答える。
2人にとって、空いた時間にキャッチボールをする事は、日常茶飯事の事なのかもしれない。
でも、私にとっては知らない世界だ。
もちろん、私が今まで気が付かなかっただけなのかもしれないけど。
「見入っちゃうほどの事はしてないけどなー。なぁ?翔平」
「そうだね。藤波さんが、ステップしながら、ラケットで素振りをしているのと同じだよ」
穏やかな表情の涌井君。