キミの空になりたい
そっか……。
私がラケットで素振りをしているのと同じかー。
……って、ちょっと待って。
どうして私が素振りをしていた事を知っているの?
現役の時は、空いた時間が惜しくて、昼休みとか1人でステップしながらラケットを振っていた。
見られると恥ずかしいのもあって、人が来ないような所で練習していたはずなんだけど。
「涌井君、私が素振りの練習していた事、知ってるの……?」
「ああ。あの場所でオレも素振りをよくやってたから」
知らない間に涌井君に見られていたなんて……。
私、声を出しながらラケットを振っていたから、思い出すと恥ずかしいかも。
「あ、そうだ!翔平、お前、藤波さんに握手してもらえよ」
「……えっ?!」
上原君が突然、そんな事を言い出したので、私は驚いて声をあげてしまった。