キミの空になりたい
私と握手なんかしたくないのに、断れない空気を作ったらかわいそうだよ。
ってか、私も困るよっ!
ハッキリ断られたら、私だって傷つくんだからね。
「……藤波さん」
「は、はいっ!」
優しい声で名前を呼ばれて、慌てて私は返事をする。
涌井君はスッと私に向かって、右手を差し出してきた。
「もし、迷惑でなければ握手してもらえませんか?」
迷惑……なんて、思うわけないじゃない。
でも、本当に私なんかが握手しちゃっていいの……?
「でも、私は幸運の持ち主でも何でもないよ……?」
「神様に願い事をしてきたばかりなら、それだけでいいんだ。オレの願いも叶いそうな気がするし」
そう言って、涌井君はふわっとやわらかい表情で笑った。