キミの空になりたい


手が離れても、まだぬくもりと握られた感覚が残っている。


触れてしまった……。


もうきっと、この想いは止まらない。



涌井君と上原君はさっきまでいた位置に戻ると、またキャッチボールを始めた。


相変わらず、音がすごい。


本気で投げたら、もっと音が響きそう。


もっと見ていたかったけれど、邪魔になるといけないから私はそっと教室へ戻った。



今まで、一度も見なかった事を今さら後悔しても仕方がない。


だけど、もっと前から知っておきたかったなー。


教室にいる時の顔と、野球をしている顔があんなに違うものだとは思わなかった。


野球部は厳しいから……っていうわけじゃない。


涌井君は、野球にすべてをかけている……そんな風に感じたんだ。


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