キミの空になりたい
「すごいよね……。誰にも入り込めない壁があるようで」
ガタッと椅子をひいて、くるみも私の後ろの席に座った。
ボールを受ける音が響く中、私とくるみは言葉を交わすことなく、ただキャッチボールをしている2人の姿を見守っていた。
たとえ、恋をしていなかったとしても、この姿に引き込まれてしまっていたと思う。
くるみは、部活中に見ている光景だから、慣れてしまっているだろうけど。
どれだけ見ていても飽きない……。
気付けば、私はグッとこぶしを作っていた。
涌井君が投球フォームに入るたびに、息をのんでしまう。
真剣に前を見つめるその瞳で、いつか私の事も見てくれたら……。
そう思うのは、私が涌井君に恋をしているから。
きっと、マウンドでの姿を初めて見たあの日から……。