キミの空になりたい
ふとくるみの席を見ると、机の上にカバンが置いてあった。
通学カバンの持ち手部分に付けられた、野球部と同じユニフォームの形のマスコット。
だけど、上原君のとは違う。
マネージャー専用としてなのか、背番号の部分に赤いハートのフェルトが縫い付けられていた。
「つーか、今日から部活動禁止とか、マジ信じらんねー」
「そう言ってるけど、どうせ自主練するんでしょ?」
「あったりー。翔平が落ち着かないって言ってんだから仕方ねーだろ」
上原君の答えに、くるみはあきれたような顔をする。
涌井君、落ち着かないんだ……。
その気持ち、すごくよくわかる。
1年生の時も2年生の時も、全然そういう事がなかったのに、3年生で初めて落ち着かなかった。