キミの空になりたい
昨日の事を、お守りを眺めながら思い出していたら、
「翔平、悪い。忘れ物」
後ろにいた大輔がそう言って、引き返して行った。
……人の事ばかり気にしているから、忘れ物なんかするんだ。
あきれてオレは小さくため息をついた。
そもそも、自分はどうなんだよ。
オレの事、言えないだろ。
まあ、主将がルールを破るわけにいかねーけど。
「涌井君ー!上原君、忘れ物だってー?」
部室へ向かおうと方向転換をしたら、後ろから声が飛んできた。
マネージャーの新垣さんの声。
再び振り返って、オレはうなずく。
「まったくもうー。それだけ練習時間が遅れるっていうのにね?」
「……ああ」
彼女の言葉に、オレは肩をすくめて、フッと笑った。