キミの空になりたい
時々空を見上げる仕草は、涌井君のクセなんだろうか?
中庭で投球練習をしている時も、空を見上げていたけれど……。
「……届かない」
腕をめいっぱい伸ばして、上の方の文字を消そうとしたけれど、届かなかった。
ここは横着しないで、椅子を持ってくるべきか……。
「……貸して」
「え?」
声と同時に、私の手から黒板消しが奪い取られ、サッと届かなかった文字を消してくれた。
「あ、ありがとう……」
「どういたしまして」
顔を上げると、上原君だった。
「……え?あれ?」
上原君は、くるみよりも先に涌井君と教室を出て行ったはずだった。