キミの空になりたい
何でここにいるんだろう……?
そう思いながら、涌井君もいるのかキョロキョロとしてみるけれど、いるのは上原君1人だけ。
「ああ、俺、忘れ物を取りに来たんだ」
「そ、そうなんだ?くるみより先に出て行ったのに、何でいるのかなってビックリしちゃった」
私の仕草で、何で驚いているのかわかってくれたみたいだった。
上原君はクスクスと笑う。
「いつもはノートなんて置いて帰るけど、一応、試験前だから勉強しておかないとさー。ほら、うちの野球部、文武両道がモットーだろ?成績悪いと監督に怒られるから」
「田口先生、怖いの?」
「監督、怒るとすっげー怖いぞ?その怖さを知らない藤波さんは幸せ者だよ」
オーバーリアクションで話す上原君に、私は思わずププッと吹き出してしまう。