約束。
美里side
「…れ」
聞こえない。
でも、聞きたくない。
和也の言いたいことが分かるから。
「帰れ」
言うと思った。
「帰らない。帰れないよ」
倒したままの車椅子を起こし、座り直した。
「美里ー!ごめん、遅くなっt…誰?」
「弥生…」
和也だと気付かれるのも困るけど気づかないのも困るね。
「先に入れてくれるって」
「帰れ」
それしか言わない和也。
正体に気づかない弥生。
「…弥生、行こっか。席、どこだっけ?」
私の言葉に顔をしかめた和也。
周りには、ガヤガヤとした声。