間接キス
 午後の授業をきちんと聞かねば、と思いつつも、頭の片隅で昼休みのことが離れなかった。日本史の年号と地図を見ながらも、頭の中に授業の内容は上っ面だけしか入ってこなかった。授業の終わりを告げるチャイムにビクッとした。ノートはそれなりに取ってあるものの、板書を何とか書き取る程度だった。

 日直の小野寺が黒板を消していた。

 「すまん、小野寺…ノート見せてもらってもいいか…」
 「はい?奏太くん、何してたの?」
 「いや…」
 「晴香のことでも考えていたかー、このこの~。」

 こいつも同じ部活だった…考えていたことを言えるわけはない。

 そんなこんなで、午後の授業も終わり、部活の時間が来た。音楽室に入ると、晴香が既に楽器を組み立てて、ロングトーンを始めていた。幸い、今日はパート練。幸い、と言うべきかどうか、ふと悩むけれども。いつも通り、普通に練習をし始めていた晴香を見て、出入り口で足が止まってしまった。

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