間接キス
 腕の中にいる時も、そっと唇が触れた時も、緊張してギュッと力が入ってしまっているのに、行動が大胆だったりするんだよな……と晴香を見ていたら後ろから頭を叩かれた。

 「何ぼーっと突っ立ってんだよ。邪魔、邪魔、邪魔。」

 数分後に入ってきた泰一郎に叩かれて、我に帰った。

 「あのさ、泰一郎、ちょっといいか。」

 他のやつはどう思うのか、聞きたい衝動に駆られたが、女子の方が多くいるここでは何とも具合が悪い。音楽室に来たばかりの泰一郎の腕をつかみ、今さっき通ってきた、自分たちの教室の方へ向かった。

 「なんだよ、突然!」

 教室の前の窓のところで、なんとなく、ここなら大丈夫かと思い、切りだした。

 「すまん、1つだけ聞きたい。」

 憮然とした顔の泰一郎が、仕方無いという顔でうなずいた。申し訳ない気持ちと、解消したいという衝動で言葉がうまく見つからなかった。
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