間接キス
 分かりやすく言うと、何か生々しくて、言いづらい。

 「だから……その……なめるんだよ、リード。」

 一瞬動きが止まり、泰一郎が爆笑した。

 「奏太……お前は小学生か!」
 「いや、なんか、その……」
 「間接キス、ってことだろ。っていうか、お前ら、付き合ってるのに、何だよ、今更。」

 泰一郎の笑いが止まらないという状態で、僕は耳まで真っ赤になった。そうだよ、付き合っている。けれども、晴香があまりに自然にリード吹いてって渡すもんだから、何も分かっていないか不安だということを伝えた。

 「あー、何かそれ、よく分かるなー。」
 「だろ!」
 「で、後輩に同じことをしないだろうかと。」
 「そう。」
 「宇野にそれやったら、どうしようかと。」
 「……そうだ。」

 宇野というのは、4月に入った男の後輩だ。何の気なしに、宇野にリードあげるなんて目の前でやられたら、昼休みのやり取りでふと気になったのだ。
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