【特別番外編】雨あがりのチューリップ

◇梨乃side2◇


「あのぅ……その、あなたの捜している人の特徴はどんな?」
「見た目は柔らかい印象を受けるのですが、話をすると、とても凛としていて……ああ。特に目には力強さがあって、芯の強い――」
「あの、その……出来れば服装とか、髪型とか……」
「え? ああ! そうですよね! つい……」


捜してる相手――彼女さんなのだろうけど。

その彼女さんについて、恥ずかしがることもなく、こんな初対面の私に褒めちぎるってすごい。
さっきも『大切な人』って公言してたし……。

相当、好きなんだなぁ。


「いえ……とても魅力的な方なんですね」
「はい。とっても!」


わぁ……。なんかこっちの方が恥ずかしくなる。

でもやっぱり羨ましいな。
センセイなら、こんなふうに見ず知らずの人に、私のことなんて話をすることすらなさそうだもん。


「あ。服装ですね! 今日はジーンズに上は裾にレースをあしらった白いトップスでした。胸に翡翠色のペンダントを。髪型は――きみと同じような感じかな」
「おいくつなんですか? その人」
「二十歳になりました」
「あ。私と同じだ」


あれ? 確かこの人、32ってさっき聞いたけど……だとしたら、結構歳の差があるんだなぁ。

イマドキ珍しくはないのか。考えたら私も8つ差だから、離れてる方なのかもしれないし。

だけど、どこで知り合うのかな?
やっぱりいわゆる、オフィスラブ??


「きみの彼はどんな人?」
「『彼』――――」
「あれ?違いましたか?」


やっぱり慣れない。

“彼氏”という感じがしない、っていうのが率直な感想。

でももう“先生”でもない。……『センセイ』ってまだ呼んじゃうこと多いけど。


「いえ……なんか、そうやって言われることに慣れなくて」


それでも、大切な人には変わりないんだけど――。


「一緒にいるようになって、まだ日が浅い?」
「……どうなんでしょう。知り合ってからは5年ですけど、こうして一緒にいるようになってからは2年です」
「え?!」


呆然として、その人は私を見る。


――え。なにかおかしなこと言ったかな、私。


首を傾げて彼を見る。
すると、その驚いた表情のまま言った。


「すごい……僕たちと同じです」
「えっ」


こんな偶然ってあるんだろうか。
いや、現実に起こってるのだけど。

そもそも、どうして私はこんなことまですらすらと話をしてしまったのだろう。

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