『アナタさ、』
教室のガヤガヤした空気は収まることもなく、そのままチャイムが鳴り、放課後になった。
前の席の蓮見くんは、多くの椅子が引かれる音で目を覚ましたようで、顔をあげた。
横にかかった通学カバンに、机の中から取り出したファイルとペンケースを入れて、窓の外を一瞥した後に教室を出て行った。
まぁ、多分帰ったんだろうけど。
…あれ、でも今日は確か…
「蓮見くん、日直だった…」
黒板の右隅を見ると、日付の下に"日直 蓮見"と書かれていた。
これを放っておいたら、また怒られるにちがいない。
私は蓮見くんの机の中から日誌を取り出し、ページを開いた。
……何も書かれてない。
「寝てたのかな…」
その様子を思い浮かべて少し笑った。