『アナタさ、』


「ありがとう」

彼は笑った。

雨は上がった。
彼の瞳の奥には虹がかかってるはずだ。

なんて、綺麗な笑顔なんだろう。
なんて、綺麗な人なんだろう。

「ねぇ、ピン持ってる?」

「え?あぁ、持ってるよ」

はい、と手渡した。
彼はありがとう、といってそれを受け取ると、長い前髪を止めた。

青い瞳があらわになった。

自然とまた、笑顔がこぼれた。
二人で微笑んだ。

この席になってよかった。
彼という人間を、ちゃんと理解できて良かった。

「あのさ、」

彼は無表情になって、目を逸らした。

…なんだろう?




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