『アナタさ、』
そしてまた振り返って、渡した消しゴムを手に、ありがとう、と言った。
少し、口元が緩んでて、笑ってるみたいだった。
…お礼はちゃんと欠かせないんだね。
お母さんの教育の賜物かな。
私はいつも通り、ニコッと笑った。
すると、満足そうに彼はまた前を向いた。
供託に立つ先生の方を見ると、こちらには目を向けていなかったようで安心した。
だけど、この私達の様子を、鋭い瞳で見ている人たちがいたのに、私は気づかなかった。