『アナタさ、』



───放課後。

今日は特に残ってすることもなかったので、カバンに教科書やファイルをつめていた。

「ねぇ、ハル。ちょっといいかしら」

その声に顔を上げると、あの三人組だった。
蓮見くんのことを好き?な三人組。

何だかいやな予感がしたけど、私は頷いた。

…三人の顔は、不気味なくらいに笑っていた。

──静まり返った校舎の隅の、あまり使われない階段へと連れてこられた。

不気味だ…
この階段も、微笑んでるこの三人も。

「ねぇ、最近蓮見くんと仲いいよね」

…蓮見くん絡みか…

「なんか、いい雰囲気だし?」

「………」

「同じ委員会だからって、仲よすぎじゃない?」

「話すようになったのは、ほんと最近で」

「それは分かる。
ねぇ、何が気に食わないと思う?」

…そんなこと聞かれても、私にはあなたたちの気持ちなんかわかんないし…

「蓮見くん、笑ったよね、今日」

…あ。
見てたんだ…

笑ったというより、ちょっと表情が緩んだだけみたいな…

「ねぇ。
どんな手使って誘惑したの?」

「……え?」

「あなた、可愛い可愛いって言われて、いい気になってるんでしょ!?」

「そんなこと知らない…」

「何ですって!?
憎たらしいっ!」

リーダー格の宮下さんの手が降り上がったのが見えた。

殴られる。

でも私は避けなかった。

──後ろに階段があるのも、忘れていた。


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