『アナタさ、』


天気予報では晴れだと言っていたのに、空にはどんよりとした雲が浮かんでいた。

雨の匂いがしたから、私は近くの窓を閉めた。
すると、前のその人はのそのその動いた。

…起こしちゃったかな?
悪いことしたなぁ…

でも、雨が振り込んできたら大変だしね…
一人で苦笑いを浮かべていると、その人は私の方へと振り向いた。

「………」

少し、不機嫌そうだ。

すると、雨がポツポツと降り出した。

彼は敏感にその音を感じ取り、窓の外に目を向けた。
するとまた、その視線は私に戻ってきた。

「……ありがとう」

さっきと表情は変わらないけど、不機嫌さは消えているように感じた。


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