秘密のお姫様【完】
「それは、着いてからのお楽しみです」
夏希さんは笑って教えてくれなかった。
でも、目的地に着いてから何で教えてくれなかったのかが分かった。
………コレは知ってたら絶対に来たくなったやつだもの。
「………此処に来るって事はもしかしなくても、もしかしする⁇」
車から降りて目の前の建物を見上げ莉麻が呟く。
「お嬢様、莉麻様その通りでございます」
「「……仕方ない頑張りますか……」」
夏希さんに言われてあたし達は一つため息を吐くと。
お互いに顔を見合わせて、頷き合う。
そして、覚悟を決めるとその建物の中に入っていった。
莉麻と瑠奈が入って行くのをメイドの夏希は見送っていたのだった。
とても綺麗な微笑みと共に。
「……頑張って下さいねお嬢様、莉麻様」
瑠奈達の姿が完全に見えなくなるとその笑みを消してポツリと呟く。
しかし、その呟きは誰にも届かず風に溶けてしまう。
チラリと瑠奈達が入っていった建物を一瞥すると夏希は車に戻りそこから遠ざかって行ったのだった。