発展途上の王国
「キョーちゃん、うるさい。うっぷ、寝れない」
「眠れないのは姉ちゃんがカレーを食いすぎたせいじゃねーか」
<キョーノスケ>はスイカが丸ごと一個入ったような<ユリン>のおなかを見ながら嘆息をつく。
「違うよ。これはカレーを作ったナナのせいだよ。あんなにたくさん作ってくれたんだから、食べないともったいないし」
「俺やナナの分まで食ったヤツが言うセリフじゃねーよ」
扇風機をもらい受けたあと、「姉ちゃんがカレーを食いたかったから壊れた」と聞いた<ナナ>はわざわざカレーを作るため一緒に<キョーノスケ>のアパートにやってきたのだ。
「けど眠れないのはお腹いっぱいのせいじゃないよ。襖の向こうからキョーちゃんの声が聞こえてくるからだよ」
「気のせいだよ。寝ぼけてるんじゃねえの?」
「そうなのかな? けどずっと聞こえてくるよ。“どうしてサビシイの? 俺はお前の味方だよ?”とか、“ “ごめんなさいごめんなさい、続けます”とか」
<キョーノスケ>は「夢見てたんだよ、夢を」とぼりぼりと頭を掻いた。