発展途上の王国
「そうなのかなー。でもどうして扇風機の前に正座しているの?」
なにが楽しくて取り憑いているのかはわからないが、この扇風機は非常に寂しがり屋で、話しかけないと羽が回らないのだ。
「それはだな、アレだよあれ」
<ユリン>にこれが知れたら一大事だ。
扇風機に取り憑いた幽霊を実体化させて、友達になることは目に見えている。
そうなってくるとただでさえ狭い部屋に同居人が増えるし、必然的に食費もかさむ。
最初から使わないのが一番いい方法なのだが、連日の熱帯夜で<キョーノスケ>自身も参ってしまっている。
せめて一晩くらいならバレずにすむだろうと思ったのだが。
「ワレワレハ、ウチュウジンダ」
<キョーノスケ>は咄嗟に羽に向って話しかけ誤魔化す。
「キョーちゃん、まだまだガキだね」
昼間自分もやっていたくせに「ぷっ」とあざけるように<ユリン>は笑う。
いいから早く寝ろよと思いながら、<キョーノスケ>は宇宙人ごっこを一晩中続けた。