発展途上の王国
カレーライス
***
応接スペースのテーブルにはカレーが置かれている。
夏代くんがリクエストした“胃に優しいカレー”だ。
「作中のようなオーソドックスなカレーじゃなくてすいません」
<ハルヨシ先生>の担当編集者である櫻井さんはいつも決まってお昼頃に、
完成原稿を取りに来る。
「お豆腐を使ったカレーなんて、初めて食べました」
おいしいと満足げに微笑む眼鏡編集者の言葉に安堵する。
けれど一番に言って欲しかった夏代くんはベッドの中だ。
「ごちそうさまでした」
食べ終わると、
櫻井さんは壁面にあるスケジュールボードを眺めた。
それを見ると進行状況が手に取るようにわかる。
「先生は相変わらずお忙しそうですね」