発展途上の王国
「帰ったの?」
玄関で櫻井さんを見送ってすぐ、
夏代くんが背中に抱きついてきた。
全体重を預けるようにぐったりしているものだから、
支えるのに一苦労だ。
「この甘えんぼさん、どうしたの、まったく」
つんのめるように倒れそうになったので、
「ぎぶぎぶ」と夏代くんの腕をはたいて訴える。
「だめ、充電中」
「わたしは電気じゃないって」
「けちー」
夏代くんは舌打ちをしてから、
ゆるやかに腕を開放してくれた。