発展途上の王国



「寝たから、幾分か楽になった?」



前髪を掻きわけて夏代くんの額に触る。

貼ってある冷えピタは体温を吸収して生ぬるい。



「熱下がったかなぁ?」



生真面目という名前が似合うほどストイックな夏代くんが、
コメディー漫画を描いている。

プレッシャーがかかりながらコンテスト用の絵を描く、
その息抜きで描いていた漫画が世間に出て、
今度はこっちで息が詰まるような日々を送っている。



夏代くんは楽をするのが下手だ。



「昔から心配してくれるの、サナだけだよな」

「そんなことないでしょ。あんなに注目されて」



説得力がないというものだ。



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