発展途上の王国
「サナだけだったよ。俺が無理してるの、気づいてたの。親も教師も、学校の連中も、同じ言葉ばっかり。“頑張れ、応援してるよ、期待しているよ”ってさ。そんな言葉も言われ続けていたら、なんのために言われてるのか、俺のために言っているのか、わからなくなってきちゃって。そんなときサナが<大丈夫? カーテン閉めようか?>って言ってくれたんだよね」
カーテンを閉めることが、
なぜそこに繋がるのだろう。
そもそもそんな記憶の欠片が、
わたしのなかには存在しないのだけれど。
「サナだけなんだ。同じ教室で無関心でいてくれたの」
「そんなことないでしょ。わたしがいたグループはほとんど、夏代くんに話しかけていなかったよ」
「でも気にしてたでしょ。ちらちらと視線が合うことはあったし」
意識していないと言えば嘘になる。
同じ空間にいれば嫌でも夏代くんの存在は目に入ってくる。