発展途上の王国
「ねえ夏代くん、考えてみて? わたしが夏代くんのこと完璧に無視してたら、<大丈夫?>なんて聞かないって。わたしもちゃんとその他大勢と同じように、夏代くんを見てたんだって。だからわたしの背中は当時から振り向いてたんだよ」
おなかに回された手が一瞬緩んだ隙に、
わたしは振り返って手を伸ばす。
夏代くんの頭を引き寄せて、
抱えるように抱きしめる。
「担当さん帰ったから、ごはんする? 夏代くんのことだから、弱ってる姿見せたくなくて、寝たふりしてたんでしょ。まったく強がりなんだから」
わたしはあやすように彼の頭部をぽんぽんと叩く。
夏代くんはまったく平気じゃないことも平気なふりをする。
その上ストイックで、
自分から自分を窮地に追い込む。
そのまま放っておくと見ているこっちが辛くなるので、
適度に子供扱いをしてみる。
それが夏代くんの息抜きになるといいのだけれど。