発展途上の王国
高校のときから、
それは変らない事実だ。
ただのクラスメートというだけで、
なんの接点もなくて諦めてしまったこともあったけれど、
わたしの腕の中に夏代くんがいる。
「サナ」
わたしの名前が夏代くんに呼ばれるだけで、
夢みたいにうれしい。
そのくらいわたしも恋焦がれていたことを、
これから過ごす夏代くんとの時間の中で、
少しずつ話していけたらいいな。
「安心したら、おなかすいた」
「はいはい。今カレー温め直すね」
よしよしと夏代くんの背中をさする。
夏代くんの背丈はわたしよりも大きいけれど、
やっぱり子供のようだ。
「でも、まずは甘いものちょうだい?」
「アイスってこと? カレー食べ終わってからじゃだめ?」
「そうじゃなくてね。こっちのことだよ」