発展途上の王国
「夏代くん、勝手に入ったからね」
玄関扉を開けるとすぐに部屋の熱気が襲ってきた。
思わず顔を顰める。
外も太陽が照りつけ“暑い”というより“熱い”という感じなのに、
中はもっと酷い。
炎天下の中で車を数時間放置し、
ドアを開けて入る瞬間を思い出した。
「冷房切れちゃったのかな?」
彼が描く漫画は軌道に乗っていて、
アニメ化の話も出たり出なかったりの人気振りだそうだ。
アシスタントさんが手伝いに来るくらいの金銭は持ち合わせているのだから、
電気代が払えないわけではないと思うのだけれど。