発展途上の王国
衝動的に入りたくないと感じながらも、
中にいる病人のことを考えるとそうも言っていられない。
彼が普段仕事をしているリビングに足を運ぶ。
「夏代くん、生きてる?」
首を振る扇風機が部屋の隅に置かれ熱風を撒き散らしている。
室内のほうが暑さの密度が濃いような気がする。
窓を開けると中の熱が外に向かって流れていく渦が見えた。
この熱気が歩道の通行人に降り注ぐのだろうと思うと少しだけ心苦しい。
そんな小さな呵責と格闘しながら、
キッチンにある冷蔵庫にお見舞いを入れた。