6 on 1 lovers -来たれ生徒会-
私の右後ろからひょっこりと顔を出したのは、会長の浅倉タクトだった。相変わらず顔面には爽やかすぎる程の笑顔を貼り付けている。私たちは驚いて、変な声を発しながら会長を見た。いつの間にこの教室に入ってきたのだろう。三剣くんの表情を見ると、どうやら彼も気が付いていなかったようだ。目を丸くさせている。
「もー!タクト、ビックリさせないでよね」
「二人とも気付いてると思ったんだ。なんだ、気付いていなかったんだったら、もっとわっと驚く登場の仕方をすればよかったよ」
「いいから普通に登場してよ」
「お疲れ様です、浅倉会長。」
「やあ」
会長は軽く手を上げ、私と三剣くんに挨拶をする。同時に扉の方から音がして、私たちは振り返った。入室してきたのは、副会長の近藤さんだ。
「どうも」
「おっ、早かったね。コンビニ、行ってきてくれた?」
「あぁ。全く浅倉は人使いが荒い。言っておくが代金は全額回収するぞ」
「わかってるって。急にアップルティーが飲みたくなっちゃってさ。購買にないから助かったよ、ありがとうスバル」
「別にいい。ついでに自分の用事も済ませてきた」
にこりと笑って、会長はコンビニ袋を近藤さんから受け取る。側に立っていた三剣くんは「なんで!僕のお菓子は!」と抗議の声を上げ、それを宥めるように会長が三剣くんの頭を撫でた。その光景は何とも微笑ましい。
「あ、そういえばさ。来月の予算案、もう出してくれたかな?」
三剣くんの髪の毛を乱暴に撫で回しながら、会長は私に振り返り言う。手の平の下では不服げな表情をした三剣くんが唇を尖らせていたが、満更でもないようだ。会長も、それが分かっててやっているのだろうか。
「す、すみません!急いでこれから出してきます!」
「そんなに急がなくても大丈夫だよ。………まぁだからと言って、のんびりされても逆に腹立たしいけどね。」
「今すぐ行ってきます!!」
浅倉会長の笑顔は時に恐怖と化す。笑っているというよりも、恐喝をしていると言われた方がしっくりとくる。そんなおどろおどろしい会長の笑みを間近で拝見して、私がのんびりなんてしていられるはずもない。机上に置いてあった記入済みの書類を左手で引ったくり、みんなに軽く会釈をしてから急いで教室を出た。