6 on 1 lovers -来たれ生徒会-
→ 近藤スバルの場合 1
眼鏡ヒーロー登場
「数人で一人を攻めるとは、感心しませんね。」
左手で銀縁の眼鏡を押し上げる。その動作は極めて繊細で美しく、私は思わず今の自分の状況を忘れ見入ってしまう。
「…近藤さん、」
ホロリと私の口から発された名前に反応したのか、彼は視線だけで私を捉え、小さく溜息をついた。眼前の彼女たちの注目は既に彼に向いているが、その手は未だ力無く私の左肩を掴んでいる。動揺の余り、手を離すことを忘れてしまっているようだ。
彼は今一度眼鏡を押し上げた。レンズが反射して、彼の視線は何処へ向いているのかが把握出来ない。
「…貴女方は、個人個人としての力はさほど無いが、その癖、群れるとこうも強くなる。…いや、強くなった気でいるというのが正しいでしょうか。だからなのでしょう、目の前の敵を見つけては自分たちの方が有利であり、尚且つ正当であると、力によって論してくる。惨めなものですね。」
そこまで言うと、彼は長い脚で一歩一歩階段を下り私と彼女たちの間に立つと、私の肩を掴んでいた彼女の腕をそっと掴んだ。腕を掴まれた彼女は、彼の無言の圧力に泣きそうな表情を見せる。
「…あの、違うんです。これは…あの、そういうんじゃ、なくて…」
「言っておきますが、僕は言い訳は嫌いです。それを承知の上で、どうぞ。」
「……っ」
彼女の頬に涙が流れた。彼は掴んでいた腕を離すと、自分のポケットから紺色のハンカチを取り出し、スッと彼女の目の前に差し出した。
「涙を見たい訳ではありません。」
その言葉に温かみこそないが、彼なりの情けや優しさなどが含まれている気がした。彼女は再び肩を震わせて泣く。気付いてしまった。彼女はきっと彼のことが心から好きなのだ。大好きな彼に振り向いてもらう為に、近しい私をどうしても遠ざけておきたかったのだ。
「貴女も貴女ですよ、櫻木さん。全く、書類を提出しに行くというだけの極めて簡単なことがどうして出来ないんですか。」