6 on 1 lovers -来たれ生徒会-

「えーっと、ミルクココアは…あった!」

小銭を投入して、お気に入りであるココアを選択する。大きな音を立ててココアは取り出し口に落ちてきた。腰をおろし、取り出し口からココアを取り出そうとしたその時。

「キミ、2年の櫻木桐子ちゃんだよね?」

突然呼ばれた自分の名前に、私は勢いよく振り返る。そこには、先程七海との会話にも出ていた生徒会長の浅倉タクトが、爽やかな笑顔をこちらに向けながら立っていた。ファッション雑誌のモデル宛らのプロポーションと、茶色掛かったフワフワの髪の毛をきちんとセットしている様子を見ると、なるほど、イケメン生徒会長と持て囃されるだけのことはある。

「あ、俺のこと知らない?…訳ないよね。一応名乗っとくと、俺は浅倉タクト。この学校で生徒会長をしている。ま、今年3年になったけど。…大きいイベント事の時とか挨拶してるし、顔くらいは見覚えあるでしょ?」

状況が上手く掴めない私は、ただただ彼を見上げる。それと同時に頭の中では、『私はこの人に勝ったんだ』という少しの高揚を感じていた。

無言で見上げていた私の目の前に、彼は屈み、そして有無を言わせずこう言った。

「キミ、うちの生徒会に来なよ。」
「……………………………はい?」

女子に定評のある爽やかスマイルは崩さないまま、浅倉タクトは続ける。

「ずっと俺がキープしてた学内1位、奪ってくれたのはキミでしょ?ほら、さっき掲示板の前で喜んでたじゃないか!実はあの時俺も順位表見てたんだ、キミの後ろでね」
「!!!……えっと、何か…気が付かなくてすみません…」
「いやいや、いいのいいの。俺もさ、いい加減ずっと学内1位でいるの飽きたし、良い機会だったよ。キミが現れてくれたのは。奪い返す楽しみが出来た」
「!!!!!」

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