6 on 1 lovers -来たれ生徒会-
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「改めまして。俺は浅倉タクト、この生徒会の会長だよ。」
「近藤スバルです。副会長を務めています。」
「…三剣ハル。会計。」
「庶務の高萩ナガレ。さっきの口ぶりじゃ、俺のこと知ってるよな。」
「はいはーい!同じく庶務の笹川ハヤテだよ!よろしくー!」
小学生時代に、見知らぬ土地の学校に転入した時のことを思い出した。その時もこんな風にみんなの前に立たされ、クラスメイト全員から自己紹介をしてもらった。異なるのは、私の隣にいる人が教師ではなく、爽やかフェイスの生徒会長だということ。
「さ、櫻木桐子です!今日から書記として、こちらの生徒会でお世話になります!よ、宜しくお願いします!」
笹川ハヤテが両手を挙げて盛大な拍手を送ってくれた。それに釣られて他の役員達も疎らに拍手をくれる。隣にいる会長は勿論崩さぬ完璧スマイルを浮かべているし、元々歓迎するつもりは無い様子だった三剣ハルは不機嫌そうな目で床に視線を落としていた。
「中上川高校生徒会へようこそ。歓迎するよ。まぁ、気楽に仲良くやっていこう。辞するのは自由だけど、最短記録の30分を更新するのだけはやめてよね。」
七海が言っていた《噂》のことを思い出した。もしかしたらその《噂》はただの噂ではなく、真実なのかもしれない。一瞬だけ、生徒会に入ったことを後悔しかけた。
「基本的に生徒会内にルールはないよ。この生徒会がこの学校のルールだからね。生徒会がイエスを出せば、学校側もイエスを出さざるを得ない。」
「浅倉先輩が会長になってからは特にねー!」
「でも、俺を含めたこの生徒会がルールを作ってることで校内成績がぐんと伸びていることにも変わりはない。ま、そういうことだよね。」
笹川ハヤテの発言の後に満足げな笑みを浮かべた会長は、そう言うと私に向き直る。
「ゆっくりと慣れていけばいいさ。何か分からないことがあれば、遠慮なく聞いてくれて構わないよ。みんなも、彼女が困っていたら色々教えてあげて。」
はい。はーい。分かりました。了ー解!
会長の言葉に、統一感のない返事をそれぞれにする役員達。その返事にニコリと笑って大きく頷いた会長を尻目に私は心の中でそっと思った。
やっぱりこの生徒会に入ったのは間違いだったんではないだろうか、と。