運命
紙一重
運命??
女の子はいつだって夢見てる
素敵な恋の瞬間を
彼と初めて出会ったのは駅のホームの階段。
人混みに押されて階段から足を踏みはずした私を後ろから伸びた腕が抱きとめてくれた。
「大丈夫ですか?」
私を抱き寄せながらそう言った彼はとても綺麗に微笑む人だった。
思えばその時、私は恋に落ちていたのかもしれない。
彼と二度目に会ったのはどしゃぶりの雨の中だった。
雨宿り目的で駆けこんだ店先。
濡れた体を拭いている私の隣りで同じように雨宿りしていたのが彼だった。
なんて声をかければいいのかわからなくて何度も彼をチラ見した。
二人きりの空間に響く雨の音。
このまま時が止まればいいと思った。
三度目は私がいつも使うバスの中。
隣りに座ったのが彼だった。
度重なる偶然に高鳴る私の胸。
これはきっと運命だ。
私は勇気を振り絞って彼に声をかけた。
「よ、よくお会いしますね。き、今日はどちらまで行かれるんで・・・すか?」
緊張から何度も言葉につまる。
・・・・変な女だと思われたかもしれない!
恐る恐る彼の方を見る私。
すると彼はそんな私を優しく見つめ、あの綺麗な笑みを浮かべて言った。
「貴女の行くところまで」
後日、彼はストーカー容疑で逮捕された。