線香花火



手元の報告書を何度も何度も読み返した。

嘘だと思いたかった。

何かの間違いだって…。

だけど何度読んでも、そこに綴られている文字が変わることなんてなくて、自嘲的な笑みが零れる。

「…土方さんこの件、僕に任せてくれませんか?」

いつもと変わらない笑みを浮かべてそう言えば、目の前の男の瞳がスッと細められた。

その目は真意を探るように、僕を鋭く射抜く。

「……どういうつもりだ」

「何がですか?」

「……」

とぼけたようにそう言えば、暫く睨みつけていた土方さんからため息が吐き出された。

「お前にできんのか?あそこに踏み込むってことは、抵抗されりゃあ誰であろうと斬らなきゃならねぇ。……女子供関係なくな」

確かめるように紡がれたそれに、他意が含まれているのが分かった。

少しムッとなる。

「僕にできないとでも思ってるんですか?」

これだから僕はこの男を好きになれないんだ。

気付いてほしくないことまで気づいて、変に気を回す。

今回だってそう。

この男は僕の気持ちに気づいてる。

だから心配してるんだ、僕が変な気を起こさないか…。

スッと立ち上がり、襖に手をかける。

「待て、総司」

振り返り、僕は土方さんの目をしっかりと見据えて口を開いた。


「僕は、人斬りですよ」

……そう身も心も僕は血に染まりきってる。

「そんな僕に、あの子は綺麗すぎるんですよ」



だから、僕は君に相応しくない。


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