線香花火
「一つしか違わないもん!」
その言い方が、自分は子供だと言っているようなものだと気づかないのだろうか。
クスクスと笑みを零せば、二人しか居ないこの空間にはやたらと響いて、いつしか多恵ちゃんの笑い声も混じっていた。
それだけで二人だけのような、この世界には二人だけになったような感覚になる。
そんな馬鹿げたことを考えてしまうほど、僕は悲しいくらいに君が好きなんだ。
不意に目が合えば、君の瞳には僕しか映っていなくて、きっと僕の瞳にも君しか映っていなくて…。
「っ!」
気が付けばぶつける様な荒々しい口付けをしていた。
引き寄せた君の腰は細くて、こんなにも小さかったのかと、思い知らされる。
後頭部に回した腕には僕が贈った梅の花の簪があたって、さらに興奮してしまった。
角度を変えて何度も何度も、君の唇に吸い付く。
最初は戸惑っていた君も、僕と競うかのように唇を追うように重ねてきた。
吐き出される呼吸はただただ暑くて、僕たちの熱を上げていく。
「総司、くん…」
名残惜しくも君の唇から離れれば、揺れる声が僕の名を呼ぶ。
ギュウッと君の肩口に顔を埋めた。
途端に香る君の匂いに、どうしようもなく泣きたくなった。