線香花火


「ごめん…ごめんね多恵ちゃん」

情けない顔を見られないように、肩口に顔を埋めたまま、僕は何度も「ごめん」と繰り返す。

我が儘な僕でごめん。

でも今だけは、今だけはどうか君は僕だけのものだと思わせて。

君の匂いも

君の体温も

君の声も

全部全部、今は僕だけのものだ。

「総司くん?どうしたの?」

背に回された腕が、あやすように上下に動く。


…優しくしないで。


きっと僕に優しくした分だけ、君は後で後悔するから…。

これで最後だと言い聞かせて、君を抱きしめる腕に力を込めて、そしてそっと離れる。

君は何で?というように、行き場をなくした腕をまた僕に伸ばそうとした。

僕はその手をやんわりと制し、首を横に振る。

「…そう「好きだよ」っ、」

多恵ちゃんの言葉を遮り、自分の思いを声に出す。

多恵ちゃんは驚いたように、目を見開いていた。

その表情が面白くて、フッと笑いを零しながらもう一度言葉にする。

「僕は、多恵ちゃん…君のことが好きだ。どうしようもないくらいに君が好き」

一度口にしてしまえば、何と伝えようかと悩んでいたあの日々は何だったんだと言いたいぐらい、言葉はすんなりと僕の口をついて出てきた。


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